性教育と聞くと、月経教育やセックス教育などの狭義での「性教育」と捉えられがちなので、タブー視されたり、苦手意識をお持ちの方も多いのではと思います。しかし「性教育」は、単に体の仕組みや性行動を知るだけの教育ではありません。
求められるのは、「人間関係」「人権」「愛」「ジェンダー平等」「性の多様化」「生と死」など、包括的に「性・生」を捉えた教育です。人として、より豊かな「性・生」を生きるために、より良い人間関係の中で誰もが人として大切にされる社会を作るために、我が子が性加害者にも被害者にもならないために、いのちが生まれ、育っていく現場から伝えたい「いのちの話」があります。そして、それは、自分や周りの人たちの心と体を守るために、乳幼児期から、思春期、青年期、大人になっても、一生学び続ける必要があるものです。
私は主に、幼稚園や小学校での授業のご依頼を多く頂きますが、学校の授業では、国際セクシャリティガイダンスや学習指導要領、性教育の手引きを踏まえ、先生方や関係者の方々と十分な打ち合わせを持った上で、各年齢の成長発達段階に合わせて組み立てていきます。助産師だからこそ伝えられる包括的性教育として、「医学的知識に基づいた知識の伝授」、「胎児・赤ちゃん人形抱っこや妊婦さん・赤ちゃんとの触れ合い等のアクティブラーニング」、「現場で日々実感するいのちの重さ」などをお伝えしています。今まで生まれて育ってきた自分の「いのち」を改めて見つめ、そんな自分の「いのち」をこれからどう生きていくか、自分の体と心を大事にして生きていくにはどうしたら良いかを一緒に考えていく、そんな授業を心掛けています。(「めぶき助産院の包括的性教育」HP)
しかし、性の学びは当然ながら、学校で一回授業を聞けばそれで良いというものではありません。日々、家庭で、学校で、折を見て繰り返し伝えていくことが必要です。その為には、子どもたちの周りにいて、子どもたちを守るべき立場にあるにも関わらず、義務教育で包括的な性について学ぶ機会が殆どなかったであろう私たち大人が、まずは学び、性の知識や価値観をアップデートしていくことがとても重要です。苦手なことから逃げないで(自分自身のプライバシーは大切にして大丈夫)、大人がこどもたちと一緒に学ぶ、まずはここから始まります。
PTAや幼稚園などの保護者会から声が上がり、乳幼児期のお子さんを持つ親向け講座や、思春期のお子さんを持つ親向け講座なども不定期に開催していますが、ここ1年ほどは、「性教育」への社会の関心が急速に高まっており、とても有難いことに、講演会の依頼が何倍にも増えました。刑法の見直しが検討会で活発に議論されたり、「女性活躍・男女共同参画の重点方針2021」や「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」などが決定されるなど、一歩ずつ社会が良い方向へ変わってきている今。学校や行政任せではなく、ご家庭も一緒になって、こどもたちの体と心を守っていける社会を作っていけたらと改めて思います。