「生理の貧困」を広く見渡してみると、男性にも女性にも「生理」「性」に対する知識がないこと、歪んだ「性の価値観」に捉われていることが、大きな社会の問題の一つとして見えてきます。
「性」や「生殖」は、子孫を残す、命を繋ぐという、生物として、生きる根幹に大きくあるものにも関わらず、義務教育で「性」に関する正しい知識を学ぶ機会を与えられていない日本では、人権や生命の尊厳などから最も遠いところにある「商品化された性」、いわゆるアダルトコンテンツなどを「性」のお手本にして「性の価値観」が築かれてしまっている現状があります。暴力的であったり、支配的であったり…そんな歪んだ性の価値観や正しい性の知識の欠落は、性暴力やDV、虐待、中絶、若年妊娠、自殺…などへと繋がっていきます。また、ジェンダー不平等から生まれる経済格差、性役割の固定観念(ジェンダーロール)から生まれるワンオペ育児、産後うつなど、子育て環境の困難を生むことにも繋がります。
性教育とは、単に性器や性交、生殖を教える教育ではありません。「性」を知ることは、自分の体や心を知り、自分を大切にして生きるための、人としてより豊かな人生を生きるための人権や生命の尊厳を知ることです。
全ての人々は、「性(生)」に関する正しい知識を学び、サポートを受ける権利=「リプロダクティブヘルス/ライツ」を持っています。それが当たり前に保障される社会の実現が望まれます。
大切な子ども達が、20年後、30年後に、生きづらさを抱えなくて済むように、「性(生)」について、困りごとや悩みを話してもいいのだと思える社会を作っていくこと、お互いが対等な立場で気持ちを伝え合う、助け合う、繋がり合う、思いやることが大切なのだということを、幼少期から全ての子どもたちに、繰り返し伝えていける社会を作るために、まずは大人が「性」の価値観を見直すことから始めてみませんか?