私たち助産師は、人が今まさに生まれてこようという時、当然のことながら、その命が無事に生まれて来れるよう見守ります。平和に暮らしていると、それは容易い事のように感じるかもしれませんが、どんなに医療が発達していても、どんなに必死に助けようとしても、救えない命を無くすことは出来ません。空に帰って行く小さな命と出会うたび、自らの無力さに絶望し、逃げ出したくなります。その小さな命たちは何を伝えようとしてくれているのか、その小さな命に報いるには、自分はどう生きるべきなのか、考えても考えても当然のことながら答えは出ません。おそらく一生、答えは出ないけれど、一生かけて考え、悩み続けるしか無いのだと思っています。命は当たり前に存在しているのではないこと、命は一人では生きていけないということ、今、命がある自分たちは、この命をどう生きていけば良いのか、この先もずっと子どもたちと一緒に考えていきたいと思っています。
また、こども達にお話しするときに、一番にお伝えしたいと思っていることは、人と繋がり合うことを諦めないで欲しいということです。人は何歳になっても、人との繋がり、触れ合いの中で生きていかなければ、人としての心が育ちません。良い気持ちも嫌な気持ちもあって良くて、そういう気持ちを全部感じながら心をたくさん動かして、感じて、心を育てていって欲しいのです。赤ちゃん時代から、「いのち」は、たくさん抱っこされて大きくなるということ。それがなかったら、心は育たないということ。もしも今、辛い人間関係の中にいたとしても、世界はこの先どんどん広がるから、諦めず、どこかにいる分かり合える人を探し続けて欲しいこと。話を聞いてくれる人、相談に乗ってくれる人を探し続けて欲しいこと。私の授業から、そんな気持ちが伝わっていると良いなと思います。
そして、大人の方、お家の方へ、一番にお伝えしたいと思っていることは、「性」にまつわる困りごとが、相談しやすい子どもたちとの関係作りを、日々の関わりの中で育てていって欲しいということです。性の知識を伝えることは勿論大切なことなのですが、それよりも大切なのは、相談出来る信頼出来る大人が身近にいるのかどうか。性のことに限らず、日常で、「受け止めてもらえている(大事にされている)実体験」を重ねれば重ねるほど、誰かに助けを求めれば解決できるという思考が生まれやすくなります。あなたのことを大切に思っているというメッセージは、自分は人に愛されるに値する人間なのだと、自分を大切に思う感覚、自己肯定感を高めてくれます。その感覚なしに知識だけ与えても、自分の命を大切にして生きていくことは出来ないでしょう。