小学校高学年の授業は、2時間という、こどもたちには少し長い時間、お話しさせて頂くのですが、初めはニヤニヤしたり恥ずかしそうにしていた子たちも、なぜ今日、私が話しに来たのかを伝えるとグッと真剣な顔になり、発言も活発に、みんな最後までキラキラした目で聞いてくれます。必ず書いてもらう感想文には、素直でまっすぐな感想や質問がたくさん寄せられます。こどもたちは、自分の体や心や未来のことを知りたいと思っているし、どうすればそれを守っていけるかも知りたいと思っています。大人はそれを伝えて守る義務があると思うのです。大人も子どもも誰もが「リプロダクティブヘルスライツ」、性について自分の気持ちが大切にされ、自分の体のことを自分で決める権利を持っているのですから、それが当たり前に遵守される世の中を作らなくてはなりません。
また、幼少期は、性犯罪の被害にあってしまったり、性の困りごとに直面したときに、知識がないことで自分で気付けず、理解できる年齢になって初めて自分に起こった事の重大さに気付き深く傷つけられるという問題があります。性被害は魂の殺人と言われるほどに、人の心を生涯にわたって痛めつけます。そういった被害を最小限に食い止めるためにも幼少期からの性教育がとても重要です。学校のみならず、保育園や幼稚園などでも、全てのこどもたちに自分の体と心を守るための知識を伝えていける社会を作らなくてはいけません。
私の所属する東京都助産師会北多摩第一分会で、2020年度は、管轄の自治体(立川、国立、昭島、武蔵村山)に、性教育を全ての小中学校で実施して欲しいという内容の要望書を提出させていただきました。提出して直ぐに、国立市の教育委員会からご連絡をいただき、早速、小学校5年生の授業が数校実現し、来年度は市内の全小学校への授業実施の為の予算組みを検討して下さっているところです。
また、昨年度、昭島市の市民団体からのご依頼で実施した、小学校低学年・高学年向け「いのちの話」の講演会では、定員40組の親子で参加者を募ったところ、キャンセル待ちが100名以上出た為、年度内に、もう一度講演会を企画開催するに至りました。このことで、予想を上回る市民の関心の高さを伺い知ることが出来ました。しかし、親や学校の先生の関心の高さにより、機会に恵まれる子とそうでない子に分かれてしまう、差があるということは好ましくありません。ぜひ、義務教育の中で、誰もが包括的性教育を受けられるような社会を作っていきたいです。2021年度も、行政への働きかけを続けると共に、地域での活動や、授業内容のブラッシュアップに努めて参りたいと思います。